皆さんこんにちは。中小企業診断士の猪師です。
本日は「経営を上手に行う方法は?月次決算書の進捗確認により得られる3つの効果」について解説します。
中小企業の社長さんの中には、「自社のお金の流れが漠然としていてきちんと把握できていない」、「財務状況は理解しているつもりだけど決算書を見ると思ったよりも利益が出ていないことがある」、「そもそも決算書を見るのが苦手」といった方が一定数いると思います。
自社の状況を数値で理解することは、良い経営をするための第一歩です。
きちんとした状況把握ができないと、間違った施策を行ってしまう原因になるので、上手く状況把握できる方法があると良いですよね。
そこで本日は、
・素早く状況把握をして素早く次の手を打ちたいけど、どうしたらいいかわからない。
・とはいえ、数値の管理にあまり時間を取られたくない
といった方のために、経営の専門家である中小企業診断士の猪師が、「自社の状況把握をするための方法として月次決算の進捗確認の方法と月次決算の進捗確認を実施することで得られる効果」を解説します。
この記事を読めば、より月次決算を身近に感じてもらうことができ、経営改善をしていくことが可能になります。
さらに詳しいことを知りたい方はお問い合わせフォームからのご質問も無料でお受けしておりますのでお気軽にご連絡ください。
月次決算書の進捗確認で得られる3つの効果
それではまず最初に月次決算書の進捗確認で得られる効果について結論から先にお伝えします。
②最善の施策を素早く展開する事ができる
③利益の積み上げが楽しくなって利益体質が実現できる
それでは順番に見ていきましょう。
自社の財務状況をタイムリーに知ることが出来る
月次決算書の進捗を毎月確認することで、計画に対する進捗状況を知ることができるようになります。
そうすることで、今年度の売上・利益の目途をつけることが可能になります。
月次決算書の進捗確認を実施していないと、「売上が思ったより少なかった」「利益が思うように伸びなかった」「経費がこんなにかかっていると思わなかった」等、重要なことも期末が終わってから結果を知ることになり、手遅れとなる可能性が高くなります。
月次計算書を見なくても経験上ある程度の目途はつけることが出来ると思われる方もいるかもしれませんが、意外と売上などの数値を勘違いしていたり、自社の利益構造を正確に把握していなかったりするので、実際の数字を見ながら毎月月次決算書を確認した方が、確実に自社の状況を把握できるようになります。
また、過去12カ月の数字の累計を折れ線グラフにした「年計グラフ」を作成することで、季節的な変動を消した状態で長期的な傾向を知ることができるようになります。
作成の仕方は簡単で、たとえば2022年8月から売上高の年計グラフを作る場合、使用するデータは以下の通りとなります。
・2022年 8月の売上年計:2021年 9月~2022年 8月の月次売上累計
・2022年 9月の売上年計:2021年10月~2022年 9月の月次売上累計
・2022年10月の売上年計:2021年11月~2022年10月の月次売上累計
・2022年11月の売上年計:2021年12月~2022年11月の月次売上累計
~以下継続~
このグラフは前年同月よりも売上が大きいとグラフが上に傾き、売上が小さいとグラフが下に傾くので、前年との比較が一目でできることが特徴になります。
これらは全て月次決算を行っているからわかることであり、もし月次決算をしていないと今年はなんとなく調子が良さそうだ・悪そうだといったことしかわからなくなってしまいます。
最善の施策を素早く展開する事ができる
上記の通り、月次決算書の進捗を確認する事で、現状の自社状況がわかるようになりました。
わかったから良かったねではなく、次のアクションとしては良い所を伸ばして、悪い所は克服していくことが重要になります。
月次決算書の進捗確認をする一番のメリットは、この次のアクションを素早く展開できることにあります。
売上が下がっているのであれば、売上向上のための施策を検討して手を打つでしょうし、費用低減策が上手くいっているようであれば、その施策を継続または他の費用についても同じ施策を行う事でさらなる費用低減が可能になるかもしれません。
このアクションを1年間単位で実施するのと毎月実施するのでは、経営において大きな違いが出てくるのは明白かと思います。
利益の積み上げが楽しくなって利益体質が実現できる
これは実際に私の支援する経営者に起きたことです。
月次決算書の進捗確認を毎月実施するようになる ⇒ 他者の目が気になりきちんと経営するようになる ⇒ きちんと経営をするようになったので利益が積み上がる ⇒ 利益が積み上がるのが楽しくなる ⇒ さらにきちんと経営するようになる といった正のスパイラルが起きて、ドンドン経営状態が良くなっていきました。
これまで、節税を理由に交際費を沢山使ったり、余計なものを買ったりしていたようですが、月次決算書の進捗確認をきちんとするようになってからは、会社を大きくしてやりたいことを実現する方向に舵を切って大きく生まれ変わりました。
社内だけで月次決算書の進捗確認をするのも良いですが、外部コンサルを雇ってその会議に出席してもらうだけでも、「他者の目が気になる」がより強化されるようになるので非常におススメです。
※この「他社の目が気になる」は健全な強制力と言って、指示・命令を受けるよりストレスの少ない強制力として、色々なところで活用されています。
最低限これだけはやりたい。月次決算書の進捗確認の方法は?
それでは具体的な月次決算書の進捗確認方法について、以下の通り解説していきます。
いつ実施するか
実施日は毎月の締め日のすぐ後にしましょう。
なぜ毎月の締め日のすぐ後に実施した方が良いかというと、毎月締め日のすぐ後に実施することで次の締め日までの期間を長くすることができます。
次の締め日までの期間を長いということは、施策を打ってその効果が出る可能性が高いので、トライアンドエラーによる検証を数多くこなす事ができるようになります。
これが毎月の締め日の20日後とかだと、次の締め日まで10日程しか残されていませんので、新しい施策の効果の影響を検証できません。
そうすると次の次の締め日まで待って効果の検証を行い次の施策を打つことになるので、トライアンドエラーの回数が減少してしまいます。
そういったことからも実施日は毎月の締め日のすぐ後を推奨しています。
誰が出席するか
出席者は、社長、経理責任者、その他経営に携わる役員です。
また、月次決算書の進捗確認の効果を強めたいのであれば先に説明した理由から外部コンサルに出席してもらうのも有力です。
経営に携わっているメンバーと数字がわかるメンバーの出席は必須です。
間違っても、「下の者たちに任せた」と言って社長が欠席する事が無いようにしましょう。
社長無き月次決算書の進捗確認は、ステーキの無いステーキ定食と同じくらい、無駄なものですので、、、
何を確認するか
マクロの視点で確認をすることは以下の通りです。なお、それぞれの費用名称については、下記図を参考にしてください。
→先述した年計グラフで確認することで成長度を確認します。成長が鈍化している場合は手を打つ必要があります。
・変動費・粗利・粗利率
→特に粗利率について、計画値もしくはこれまでの平均値と乖離が無いかを確認します。乖離がある場合は原因を検証します。
・人件費・労働分配率
→人件費/粗利で算出される労働分配率について計画値もしくはこれまでの平均値と乖離が無いかを確認します。乖離がある場合は原因を検証します。
・利益(経常利益)
→計画値と乖離が無いかを確認します。粗利率・労働分配率に異常が無い場合はその他固定費に異常がある場合があります。
・減価償却費・借入金返済額・税金・当該月の最終キャッシュフロー
→ 利益 ー 税金 +減価償却費 ー 返済額 = 当該月の最終キャッシュフロー が算出できます。
最終キャッシュフローがプラスの場合、会社の手元に現金が残ることになります。
この積み重ねを毎月行い、会社に資金を残していけるような体質にしていくことが経営改善の第一歩です。
※設備投資が毎月発生する可能性は低いので上記計算式では割愛しています。
・貸借対照表
→前月からの現預金の増減・利益剰余金の増減を確認します。
→その他、異常に増減している項目の有無を確認し、あるようであればその原因を確認します。
・無駄な経費を使っていないか
・「無駄な経費以外」にも想定外の費用は発生していないか?
(google広告で必要以上に経費を支払っていないか?契約に問題があり不要な経費を支払っていないか?等)
・逆に計画に無理は無かったか
を知ることが出来ます。
月次決算書の進捗確認を実施して成功した事例
ここでは、2020年版の小規模企業白書に記載されている実際に月次決算書の進捗確認を実施して成功した事例を紹介します。
業 種:野球用品などの製造・仕入販売と宮崎市内のスポーツ施設管理事業
規 模:従業員数21名、資本金3,300万円
課 題:
海外進出に備えた自社工場の設置及び委託生産から自社生産への切り替えを検討する中で経営管理が不足していると認識。また、自身で作成していた経営計画の精緻化も必要と考えていた。
実施内容:
・年次決算でしか把握していなかった財務状況の月次管理化
・既存経営計画をブラッシュアップし、5か年経営計画を策定
・取引金融機関への月次決算などの情報共有を強化
成 果:
・自社工場の設置に向けた資金調達の際には、金融機関やベンチャーキャピタルなどに対して、上記の5か年計画に基づくプレゼンを実施し、円滑な調達を実現。
・財務状況の月次管理化導入後、売上高は前年比で約2割増加と堅調に推移。
経営者の声:
数字による経営管理の重要性を身近に感じるようになった。今後は、自社工場で製造する製品ラインアップの拡大を見据え、製品別の売上高・原価管理にも取り組んでいきたい。
このように月次決算書の進捗確認を実践する事で、実際に経営を改善できている会社はこの会社以外にもいくつもあります。
詳細はコチラのURLから確認することができますので興味のある方は確認いただければと思います。
(かなり下の方です。事例3-2-3:久野浩史税理士事務所が対象です)
中小企業庁:2020年版「小規模企業白書」 第3部第2章第1節 中小企業における現状把握及び経営計画策定の実態 (meti.go.jp
まとめ 月次決算の進捗確認を毎月行い自社状況を正確に把握し、タイミング良く最善の手を打てるようにしていこう
今回の記事では、月次決算書の進捗確認により得られる3つの効果を解説しました。
☑月次決算書の進捗確認で得られる3つの効果
効果①:自社の財務状況をタイムリーに知ることが出来る →確実に自社の状況を把握できるようになり、正しい施策を打つための素地ができる。
効果②:最善の施策を素早く展開する事ができる →年間12回もの回数、タイムリーで最適な施策を打つことができる。
効果③:利益の積み上げが楽しくなって利益体質が実現できる →利益を積み上げる正のスパイラルが発生し、経営状態がドンドン良くなる。
☑最低限これだけはやりたい。月次決算書の進捗確認の方法は?
①月次決算書の進捗確認実施日は毎月の締め日のすぐ後。
②経営に携わる役員は必ず出席。社長!あなたもですよ!
③特に大事なのは、売上・粗利/粗利率・労働分配率・当該月の最終キャッシュフローの状況 →毎月の最終キャッシュフローがプラスとなるような体質を目指しましょう。
月次決算書の進捗確認は、会社の成長を目指す上で非常に大切です。
自社の状況を正確に把握することは頑丈な土台を作ることに似ています。
土台がしっかりしないまま次のことをしようとするよりも、しっかりした土台がある上で新しいことをした方が成功率は上がります。
皆さんも是非、月次決算書の進捗確認を行い土台をしっかり固めた上で、成功する施策をドンドン打って会社を大きくしていってください。
もし、月次決算書の進捗確認について、どうやったらいいかわからない方がいらっしゃいましたら、是非ぼたんコンサルティングへご連絡ください。
中小企業経営の専門家への相談が初回無料で受けられますのでお気軽に以下のお問合せフォームから問合せ頂ければと思います。
本日は最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
今後も継続して記事を更新していきますのでお楽しみに!
【お問い合わせ】