皆さんこんにちは。中小企業診断士の猪師です。
本日は「売上分析を行う目的とその手法とは?」について解説します。
経営者の皆様は誰しもが売上を向上させたいと切に願っているかと思いますが、なかなか思い通りにいっていないのが現状かと思います。
上手くいっていたとしても、漠然と「今後も売上を維持していけるのか」が不安な方もいらっしゃると思います。
そこで本日は、
・売上を上げたいけど、どうしたらいいかわからない
・売上を上げていくために色々な施策を実行しているけど、なかなか成果が上がらない
・現在の売上には満足しているが、将来のことを考えてテコ入れをしたい
といった方のために、経営の専門家である中小企業診断士の猪師が売上向上のための方法として、売上分析について紹介したいと思います
売上分析したところでどんなメリットがあるの?と思われる方もいるかもしれませんが、本日は「売上分析を行う目的とその手法とは?」について解説をしていくことでその疑問に答えていきたいと思います。
この記事を読めば、売上向上のためのヒントを得て盤石な経営体制を作るきっかけにすることができます。
さらに詳しいことを知りたい方はお問い合わせフォームからのご質問も無料でお受けしておりますのでお気軽にご連絡ください。
売上分析の目的
売上分析の目的について結論から先にお伝えします。
【売上分析の目的】
現状を的確に把握し具体的な売上目標を設定し、設定した売上目標を基に行動し、フィードバックを得ることを繰り返し、トライアンドエラーの中で最適な売り方を見つけていくこと。
これが売上分析の最大の目的です。
例えば売上向上を目標にしたときに、「それでは売上を上げてきて下さい」と言われても漠然としすぎています。
その場合、「A商品を毎日10個売る」「1週間で顧客 30人と面談を行う」などのような目標の方が明確で、迷いなく行動できます。
このように目標は漠然としているよりも、より細かく設定した方が行動に繋がりやすくなります。
ただ、細かく設定するにしても「ご飯を毎日3合食べる」のような見当違いの目標では売上は上がりませんよね。
そこで、的確で具体的な目標を設定するために売上分析を行うことが必要になります。
売上分析では、商品やサービス別、部門別、営業スタッフ別、顧客別など、さまざまな角度から分析します。
例えば、「B商品は全体の売上の30%を占めているが、C商品は売上の1%しか売れていない」だとか「40代の顧客向けにはD商品がよく売れている」などが見えてきます。
この分析をすることで、どこにどのような強みがあるかもしくは課題があるのかなど、さまざまな実態が見えてきます。
実態がわかれば、商品別や顧客別の売上目標やノルマを設定することができ、より現実的な施策を検討しやすくなります。
また、このように具体的な売上目標を設定できると、目標に達していなかったときにその要因を探るにあたって、課題を発見しやすくなりますし、時にはそもそも売上目標が妥当だったのかを検証することも可能になります。
この検証を繰り返す、つまりトライアンドエラーを繰り返すことで経営はドンドン良くなっていきます。
漫然と過ごした10年よりも明確な目標を持って過ごした1年。どちらの方がより成長に繋がりそうでしょうか?
もちろん、明確な目標を持って過ごした1年の方が成長できそうですよね。
それでは、次の章から売上分析を行う事で得られるメリットについてもう少し具体的に解説していきます。
売上分析を行うことで得られる4つのメリット
収益性の高い商品/サービス・顧客が分かる
商品別の売上分析を行うことで自社のどの商品が売れているのかが分かりますし、顧客別の売上分析を行うことで、誰に対して自社の商品が売れているのかを知ることができます。
中小企業の場合は、弱い商品よりも強い商品の売上向上策を打った方が効果は高くなりやすいですし、苦手な顧客層よりも自社のことを好きでいてくれる顧客層に対してアプローチをした方がより効果が出やすいです。
特に、顧客別と商品別を組み合わせて、誰に対して何が売れているかを分析すると、その商品を好む顧客層を知ることができるようになり、より具体的で効果のある施策を打つことができるようになります。
商売においては、「売上の8割は全顧客の2割が生み出している」「売上の8割は全商品の2割で生み出している」というパレートの法則というものがあります。
その法則からも収益性の高い商品・顧客を理解することで、選択と集中による施策を打つことができるようになるので、経営資源の少ない中小企業にとってはメリットが大きいと言えます。
市場ニーズを理解することができる
売上分析を改めて行うことで、どのような商品・サービスがよく売れているか、どのような顧客層が購入しているかを知ることができるので、現在の市場ニーズを理解できるようになります。
また、売上分析は多くて毎月、少なくても毎年は実施するので、商品・サービスの売れ行きやどの顧客層が購入しているかの推移を把握でき、市場ニーズの変化をいち早く捉えることが可能になります。
変化が激しい時代を生き残るためには市場ニーズを迅速に捉えるチカラは必須と言えます。
そういった意味でも売上分析をしていれば、市場ニーズを迅速に捉える能力を身に付けることができるようになります。
販売促進の効果を検証できる
売上分析には、売上向上を目指して行うポスティングや広告等の販売促進の効果を検証できるメリットもあります。
売上分析をしていれば、販売促進活動によって、商品・サービスの売上にどのような変化があったか、顧客層の購入状況にどのような変化があったかを知ることが可能になります。
例えば、販売促進活動としてポスティングを行った場合、その活動に効果があれば更にポスティングの範囲を拡げることで売上の向上が期待できます。
逆にポスティングに効果が無いようであればポスティングからは撤退し、インターネット広告に切り替える、といったように素早く方法を転換することができます。
売上分析をしていないと、効果が無いことに気づかずにポスティングを継続し経費を垂れ流し続けるといった事態に陥るので、販売促進活動を頻繁に行っている経営者にとって、売上分析はよりその重要性が増します。
数字に基づいた適切な売上目標を設定できる
売上分析をすることでどんぶり勘定での売上目標ではなく、根拠があり納得感のある売上目標を設定することができるようになります。
先述した通り、売上分析を行うことで以下がわかるようになります。
・商品・サービス別の売上の推移
・顧客層別の売上の推移
・これまでの販促活動の内容と成果
これらの過去のトレンドを見ることで、現状のままだと今後1年間の売上がどの程度になるのか、販促活動をするとどの程度まで引き上げることができそうか、ある程度の目途を付けることができます。
会社全体の売上で漠然と雰囲気だけで「前年度売上の30%アップくらいが目標として丁度いいんじゃないかな」とするよりも、商品・サービス別に個別で売上推移を予測して積み上げて目標を設定した方が、より確度の高い予測になることは想像に難くないでしょう。
売上分析のやり方3ステップ
では、売上分析について、どのような流れで進めるか3つのステップで紹介いたします。
売上分析の目的を定義する
売上分析を実施する前に必要なことは、目的を明確に定義しておくことです。
売上データから得られる情報は膨大であり、目的もなく分析してしまうと結局何をしたいのか、わからなくなってしまうからです。
「売上分析をすれば、何か解決策が見つかるはず」ではなく、あらかじめ分析の目的や軸を定め、必要な情報を取捨選択することが肝要です。
では目的や軸はどのように決めるかというと、会社全体→部門ごと→個人ごとの順番で決めることをおススメします。
最終的には会社全体の目標につながるように目標を立てる必要がありますが、会社全体の目標は漠然と「会社全体で○○%の売上向上」となりがちです。
これ自体は問題ないのですが、「会社全体で○○%の売上向上」とだけ言われても、個人個人が行動に落とし込むことは中々できないと思います。
そのため、会社全体の目標を達成するための目標を部門ごとに設定することになります。
部門ごとの目標でもまだ行動しづらいので、その部門ごとの目標を達成するために、最終的には個人が動きやすいレベルまで目標を落とし込みます。
そうすることで、目標の実現性を高めることができ、会社の成長に繋がりやすくなります。
売上データを集める
次に売上分析に必要なデータを集めます。
「現状把握」を正確に行うためには売上データを目的に合わせて細分化し、それらのデータを収集する必要があります。
例えばこれまで例に挙げているように商品・サービス別や顧客別の売上データが欲しい場合は以下を洗い出すことになります。
【基本データ】
・商品・サービスごとの売上高
【売上高の構成要素】
・商品・サービスごとの商品単価
・商品・サービスごとの売上数量
・商品・サービスごとの顧客単価
・商品・サービスごとの顧客数
【顧客数の構成要素】
・商品・サービスごとの新規顧客
・商品・サービスごとのリピーター
・商品・サービスごとの購入頻度
商品・サービス別や顧客別の売上データだけでも、これらのデータを収集するためには、日常の業務の中でデータを収集できる仕組みや、収集したデータを一元管理しすぐに使える仕組みを整える必要があります。
また、市場ニーズを把握する点においては、会社内部の情報だけでなく外部マーケティング会社の業界情報、調査データや国(経産省、総務省等)が出している外部調査データも収集しておくと、自社の主観的な情報から分析した市場ニーズの仮説が合っているかを客観的な情報で確認する事も可能になります。
売上データを分析・可視化する
収集したデータはそれだけでは分析することはできません。
見やすく分析しやすい形に加工する必要があります。
加工するためにはツールが必要ですが、簡単に使えるツールとしてはExcelを活用するのが一般的です。
より見やすく簡単に加工したい、目的に応じた分析をしたい、そういった場合はBIツール(※1)やCRMツール(※2)、SFA(※3)ツールというものがありますので、それらを活用します。BIツールやCRMツール、SFAツールは、容易にデータのグラフ化が可能であり、必要な情報を的確に抽出・可視化できるようになります。
(※1)BIツール:
「ビジネスインテリジェンスツール」のことであり直訳すると、「ビジネスを賢く」行うためのツールです。企業に大量に蓄積しているデータから必要な情報を集約し、ひと目でわかるように分析するツールのことを言います。
(※2)CRMツール:
「カスタマーリレーションシップマネジメントツール」のことであり日本語では「顧客関係管理」という意味のツールです。既に自社商品を購入したことのある顧客と良好な関係を築くためのツールで顧客の個人情報や購入履歴、問合せ履歴、アンケート履歴を一元管理するものです。
(※3)SFAツール
「セールスフォースオートメーションツール」のことであり、直訳すると「販売力自動化ツール」です。見込み顧客を顧客に変える、自社製品を買ってもらうことを目的としたツールです。
売上分析における代表的な4つの手法・フレームワーク
ABC分析
ABC 分析は、商品を重要度によって、大・中・小の 3 つのグループに分類してデータをまとめます。
通常は売上高の多い順に ABC のランクづけをしますので、まず商品を売り上げの良い順に並べます。
売上上位からAグループ、Bグループ、Cグループに分け、それぞれのグループごとに施策を考えます。
それぞれ分ける割合としては、均等に分けるのではなく、以下の様に分けるのが一般的です。
Aグループ:累積売上高の70%以下の商品群 (売上高全体の70%)
Bグループ:累積売上高の70%~90%未満の商品群(売上高全体の20%)
Cグループ:累積売上高の90%~100%の商品群 (売上高全体の10%)
このように、売上データをよく観察していれば、B グループから A グループに昇格させるべき商品が出てきたときにも、素早く対応することができます。
これは「商品の売上の8割は、全商品のうちの2割が生み出している」という「パレートの法則」の考え方に基づくもので、売れ筋に注力して効率よく売上向上をするために活用しやすい分析方法です。
アソシエーション分析
アソシエーション分析とは、顧客の購買実績から、一見関係のないように見えるモノ同士の「関連性」を見出し、売れる商品とそれ以外の商品を把握することができる手法です。
よく買われている商品の組み合わせがわかれば、店舗での商品の並べ方や、EC サイトで「関連商品」を示すレコメンドなどに活用することができ、売上向上に役立ちます。
POSレジのデータから、同じ商品を購入している顧客層を見つけ出す「マーケットバスケット分析」なども効果的な手法です。
デシル分析
デシル分析は、全顧客を商品の購入金額順に10等分して、各グループの購買状況を分析する方法です。
これにより、売上比率の高い顧客層を知ることができるため、その貢献度の高い顧客層に対して優先してアプローチすることができます。
たとえばランクが最も高い1グループによって売上の半分以上が占められているのであれば、その顧客層が自社の売上を支えてくれている層であり、その層にターゲットを絞った重点的な施策を行うことで効率的に売上向上を狙えます。
分析に必要な要素は顧客情報と購入金額、購入日だけなので、どの企業でも既に持っている売上データで分析できる点はメリットである一方、過去に高額商品を一度ないし数度だけ購入し、その後ほとんど購入していない顧客も上位グループに入ってしまう可能性がある点に注意が必要です。
RFM分析
RFM分析のRFMは、「Recency (最近の購入日)」「Frequency(来店・購入頻度)」「Monetary (購入金額)」の3つを指し、これらの指標で顧客をランク付けする手法です。
当然、RFM値が高い顧客ほど、重要顧客となりますので、優良顧客層を特定することが可能であり、顧客を9種類にグループ化し、それぞれのグループごとにアプローチ施策を考えるといったことも可能です。
また、この方法であれば、最新購買日という要素が入るため、デシル分析のように過去に高額商品を一度だけ購入した顧客が上位グループに入ることが無いので、より精度の高い分析ができます。
一方で最新購買日を参照するという特性からも、RFM 分析はあくまで顧客の「現時点での状況」を分析する手法であり、時間の経過とともに顧客への評価は変化するので継続的な分析が必要となります。加えてRFM 分析は顧客にだけ焦点をあてた分析手法ですので「顧客が何を買ったか」がわからないことは留意しておく必要があります。
まとめ:売上分析で自社の強みを知り、効率的に売上を伸ばそう
今回の記事では、売上分析を行う目的とその手法とは?について解説しました。
☑売上分析を行うことで得られる4つのメリット
メリット①:収益性の高い商品/サービス・顧客が分かる
→売上の8割は全顧客or全商品の2割が生み出しており、その2割に向けた選択と集中が可能になる。
メリット②:市場ニーズを理解することができる
→売上推移から素早く市場ニーズを察知できる。変化が激しい今の時代には特に重要。
メリット③:販売促進の効果を検証できる
→データ分析しているからこそ、販売促進活動による変化を知ることができる。
メリット④:数字に基づいた適切な売上目標を設定できる
→どんぶり勘定よりも根拠ある数値を基に地に足がついた計画を立てよう。
☑代表的な利益の減らし方とデメリット 具体例
①売上分析の目的を定義する
②売上データを集める
③売上データを分析・可視化する
☑売上分析における代表的な4つの手法・フレームワーク
①ABC分析
②アソシエーション分析
③デシル分析
④RFM分析
→各分析手法の特徴をしっかりと把握した上で使い分けをしましょう。
中小企業が成功を勝ち取るためには、売上分析はとても有用な手段です。
中小企業は経営資源が限られている中で、大企業も含めた厳しい市場を勝ち抜いていかなければなりません。
そのためにも、どのような商品を残すのか、どのような販売促進活動を行うのか、従業員に何をやってもらうのかについて、大企業にも勝てる領域を選択しそこに限りある経営資源を集中し、一点突破で勝ち抜く必要があります。
売上分析をすることでその「勝てる領域」を知ることができますし、数値による根拠があるので自信を持って「一点突破する施策」を打つことが可能になります。
是非、この記事を読んだ方で売上分析をしていない方はすぐに取り組んでいただきたいと思います。
ただ、売上分析について、どうやったらいいかわからない方だとか自分のやり方が正しいかわからない方もいると思います。
そんな方は是非ぼたんコンサルティングへご連絡ください。中小企業経営の専門家への相談が初回無料で受けられますのでお気軽に以下のお問合せフォームから問合せ頂ければと思います。
本日は最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。
今後も継続して記事を更新していきますのでお楽しみに!
【お問い合わせ】